漫画『私が死んで満足ですか?』に登場する商人ゼリオ。
彼は単なる脇役ではありません。
一度は欲望に負けて破滅しかけながらも、土壇場で改心し、物語の結末を大きく左右する重要な役割を担います。
正直、ゼリオが改心をしなかったら、アステルもロロナもハッピーエンドとはなりませんでした。
この記事では、そんな商人ゼリオの心の変遷から、彼がアステルとロロナのハッピーエンドにどう貢献したのかまで、全ての謎をネタバレありで徹底的に解説します。
私が死んで満足ですか?に登場するゼリオとは?結末とネタバレ!
「ゼリオ」は、物語の重要なカギを握る人物の一人です。
彼は、主人公ロロナの知られざる「目利きの才能」を最初に見つけ、ビジネスパートナーとなった人物です。
二人の出会いは、ロロナが継母たちと訪れたあるお店でした。
ロロナはそこで、品質はとても良いのに、なぜか安すぎる値段で売られている商品を見つけます。
不思議に思ったロロナが店員さんに尋ねると、その商品はミイシ商会に所属するゼリオという男性が扱っているものだと分かります。
彼は、「良い品物を見分ける力はあるけれど、商売が少し苦手で、つい安く売ってしまう」という、お人好しな商人だったのです。
当時、ロロナは実家であるリュート家の家計を助けるため、自分の代わりに商売をしてくれる人を探していました。
目利きは良いけれど商売が下手なゼリオは、ロロナにとってまさに理想のパートナーだったのです。
そこでロロナは、自らミイシ商会へ出向き、ゼリオに一緒に商売をしないかと持ちかけます。
突然現れたまだ若い少女からの提案に、ゼリオは驚きながらも、彼女の特別な才能を直感で感じ取り、その提案を受け入れました。
こうして、ロロナの「商才」とゼリオの「商品の目利き」が組み合わさった、最強のビジネスパートナーが誕生したのです。
物語の中で、ゼリオはロロナの頼れるパートナーとして、彼女のもう一つの顔を支えていくことになります。
破滅フラグと堕落への誘惑
ロロナと協力して商売がうまくいくようになると、ゼリオの心には少しずつ「おごり」が生まれてきました。
大きな利益が上がるにつれ、彼は「いちいちロロナの許可を取るのは面倒だ」と感じるようになっていきます。
そんな矢先、ゼリオの元に「ロロナが事故で亡くなった」という知らせが届きます。
その時、彼の頭をよぎったのは、悲しみではなく、邪(よこしま)な考えでした。
彼の元には、ロロナに渡すはずだった莫大な売上金が手元に残っていました。
帳簿上はすでに支払ったことになっているこのお金を、彼は「自分のものにしてしまおう」と考えたのです。
さらに、ロロナとの契約では、彼女が亡くなれば全てが無効になります。
これで、誰にも指図されずに自由に商売ができると、ゼリオは内心喜んでしまいました。
そのタイミングで、彼は「センズ布」という新しい商材の取引に乗り出します。
アステルの母国、ステラ帝国からハングリックという商人が持ち込んできたのです。
この布は飛ぶように売れ、ゼリオは「ロロナの言うことを聞かずに、もっとたくさん仕入れていれば、もっと儲けられたのに」
と、亡くなったはずのロロナに対して不満と怒りさえ感じるようになります。
「ロロナに渡すはずだったお金も、俺がもらって当然だ」
彼の心は、完全に欲望に飲み込まれかけていました。
ロロナのおかげで手にした成功を忘れ、お金を横領し、商会を自分のものにしようとする。
ゼリオは、まさに破滅への道を突き進んでいたのです。
なぜ、改心しなければ彼は破滅したのか?
もしゼリオが改心していなければ、彼は確実に破滅していました。
その理由は、彼が「ステラ帝国皇妃が仕掛けた巧妙なワナ」に、知らず知らずのうちにはまっていたからです。
※ ステラ帝国の皇妃とは、アステルを亡き者にしようとしている人です。
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彼が「もっと儲かるはずだった」と不満を抱いた「センズ布」の取引。
これを持ちかけた商人ハングリックは、実はステラ帝国の皇妃の手先でした。
ハングリックの真の目的。
それは、ミイシ商会の相談役であるロロナ(王太子の婚約者)に禁制品「ラリス布」を売りつけることでした。
その事実を弱みとして握ることで、将来的にニルナ王国を揺さぶるスキャンダルを仕掛けることが目的だったのです。
ゼリオは、ロロナの死後、この「うますぎる話」に乗り、ハングリックとの取引を拡大しようとしていました。
もし彼が欲望のままにその取引を進めていたら、「禁制品密輸」という重大な罪で、ハンゲリックと共に逮捕されていたことは間違いありません。
そして、ロロナはステラ帝国に弱みを握られる可能性もありました。
もちろん、アステルと結ばれることは絶対にあり得なかったことは確実です。
そうなれば、ゼリオはもちろん、アステルとロロナの人生そのものが終わりを迎えていたでしょう。
つまり、ゼリオは「ロロナに渡すべき売上金を着服する」という自身の内なる欲。
「皇妃が仕掛けた禁制品取引という外からのワナ」という、二重の危機に直面しており、まさに破滅寸前の状態だったのです。
なぜ改心できたのか?破滅から救った3つのきっかけ!
欲望に溺れかけていたゼリオですが、彼はどうして破滅の道へ進まずに済んだのでしょうか。
その背景には、彼の心を変えることになった、3つの大きな「きっかけ」がありました。
1つ目のきっかけは、仮面の男アスラン(アステル)からの痛烈な一言。
ミイシ商会の上客であったアスランは、ロロナがいなくなった後のゼリオに
「ロロナがいないこの商会を、本当に君一人で経営できるのか?」
と問いかけます。おごり高ぶっていたゼリオにとって、この言葉は心の奥に深く突き刺さりました。
2つ目のきっかけは、「うますぎる話」でロロナの不在を痛感したこと。
新しい商材「センズ布」の取引が、あまりにも都合よく進むことに、ゼリオは次第に違和感を覚えていきます。
「こんな時、的確な判断をしてくれるロロナがいてくれたら…」と、彼はパートナーであった彼女の存在がいかに大きかったかを、この時初めて身をもって知るのです。
3つ目のきっかけは、心からの後悔と感謝の気持ちが芽生えたこと。
ロロナの優れた才能に頼りきっていたこと、それなのに彼女のことを疎ましく思ってしまったこと。
ゼリオは自分の愚かさを深く後悔し、ロロナへの心からの感謝の気持ちを取り戻します。
これら3つの出来事が重なったことで、ゼリオは破滅への道から引き返し、人として正しい道を再び歩み始めることができたのです。
結末|禁制品取引を告発し、アステルの勝利に貢献!
自らの過ちに気づき、改心したゼリオ。
彼のその後の行動はただ自分の身を守るだけにとどまらず、物語の結末にまで大きな影響を与えることになります。
まずゼリオは、商人ハンゲリックが持ち込んだ「センズ布」の正体を突き止めようと動き出します。
そして、仮面の男アスランからの情報もあり、その布がステラ帝国の輸出禁制品「ラリス布」であることを見抜きました。
センズ布はラリス布を巧みに着色を施された商品でした。
その後、ハンゲリックが再び商会を訪れると、ゼリオはきっぱりと取引を拒否します。
それだけではなく、事前に貴族院へ通報しており、その場でハンゲリックは衛兵に逮捕されました。
このゼリオの機転により、ミイシ商会は「禁制品取引にわずかに関わった」として、罰金程度の軽い罪で済みました。
もし彼が欲望に負けていたら、共犯として逮捕され、破滅していたことは間違いありません。
そして、この一連の行動は、さらに大きな結果を生みます。
ハンゲリックの背後には、アステルの命を狙うステラ帝国の皇妃がいました。
ゼリオが陰謀を暴いたことで、アステルは皇妃一派を退けることに成功し、ロロナを連れて母国へ帰ることができるようになったのです。
ゼリオは知らず知らずのうちに、アステルとロロナのハッピーエンドへの道筋を作る、大きな手助けをしていたのでした。
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物語の最後に、ゼリオはリュート家を訪れ、管財人であったシェザムに、ロロナへ渡すはずだった莫大な売上金をすべて手渡します。
このお金は、後にシェザムがロロナの遺志を継いで事業を行うための、大切な元手となりました。
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一度は道を誤りかけたゼリオ。
ですが、彼の改心と誠実な行動が、多くの人を救い、物語を幸福な結末へと導く重要なカギとなったのです。
まとめ:私が死んで満足ですか?のゼリオについて。
ゼリオの物語はじつは、本筋を離れて独自に展開していきます。
主要人物との絡みは少なく、ある意味、スピンオフの作品のような流れです。
ですが、ゼリオの一つ一つの行動が物語に大きな結末をもたらすので、じつは影の主役級の登場人物でもありました。
ゼリオの視点と物語を追えば、私が死んで満足ですか?という作品がとても複雑で機智に富んだ作品だとよくわかります。
私が死んで満足ですか?は一読しただけでは、内容が掴みきれないことが多いので、ぜひ、何度も読むことをおすすめします。
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